~経験の「数×質×幅」が人を強くする~
前回、「藤野の育成原則」として、こんな考え方をご紹介しました。
ビジネスパーソンの体幹 =経験の総量(数 × 質 × 幅)+ 人柄価値
今回は、この中でも「経験」について、もう少し掘り下げてみたいと思います。
そして、今年の後半は少し視点を変え、「AI時代の人材育成」をテーマにお話ししていきたいと思います。
なぜ「体幹」なのか?
「体幹」という言葉は、人材育成の世界ではあまり聞き慣れないかもしれません。
健康な身体をつくるうえで、体幹が重要だという話はよく聞きます。
なぜなら体幹は、すべての日常動作や運動の「基礎(土台)」になるからです。
家で例えるなら、手足が「壁や屋根」だとすれば、体幹は「大黒柱」。
大黒柱が弱ければ、いくら壁や屋根を頑丈にしても、家全体はグラグラしてしまいます。
私は、ビジネスパーソンにも同じような「体幹」があると考えています。
たとえば、
・高いパフォーマンスを出せる
・周囲を巻き込んで仕事を進められる
・逆境でもポジティブに向き合える
・限られた選択肢の中から適切な判断ができる
こうした、業種や職種が変わっても発揮できる「仕事の基礎力」です。
AI時代は「手足」より「体幹」が重要になる
いくら自社の商品に詳しくても、制度や仕組みに詳しくても、それだけでは十分ではありません。
こうした知識やノウハウは、家でいう「壁や屋根」、身体でいう「手足」に近いものです。
そしてAIの時代には、知識や比較的簡単なノウハウの多くをAIが補ってくれるようになります。
だからこそ人間に必要になるのは、知識をたくさん持っていること以上に、AIやさまざまなツールを適切に使いながら、ビジネスのゴールまでたどり着く力です。
つまり、手足を使いこなすための「体幹」です。
AIと共存していく時代だからこそ、この体幹をどう鍛えるかが、人材育成においてますます重要になっていくと考えています。
15年の営業経験があれば、優秀な営業なのか?
では、この「ビジネス体幹」は何によってつくられるのでしょうか。
私は、大きく「経験」と「人柄」によって構成されると考えています。
まずは「経験」です。
これまで経験を語るときには、
「営業一筋15年です」
「マーケティングに10年間携わっています」
というように、「年数」が一つの基準として使われてきました。
しかし、15年間営業をしていれば、本当に優秀な営業パーソンなのでしょうか。
マーケティング経験が10年あれば、ビジネス体幹は強いのでしょうか。
私は、必ずしもそうではないと思っています。
実際に多くの人材を見てきた経験からも、経験年数とビジネス体幹の強さは、必ずしも比例しません。
大切なのは「何年」ではなく「どんな経験をしたか」
たとえ短い期間でも、大きな修羅場を乗り越えた経験があれば、ビジネス体幹は一気に鍛えられます。
同じ営業職でも、
「同じ商材を、決まった顧客に販売するルート営業」と、
「複数の商材を扱い、タイプの異なる顧客を新規開拓する営業」
では、経験から得られるものは大きく異なるでしょう。
どれだけ打席に立ったのか。
どれだけ深い修羅場をくぐったのか。
どれだけ異なる環境や仕事を経験したのか。
それが、ビジネスの体幹を鍛える上で最も大切なことです。
経験は「数+質+幅」ではなく「数×質×幅」
私は、経験には大きく3つの要素があると考えています。
「数」「質」「幅」です。
ここで重要なのは、この3つが足し算ではなく、掛け算だということです。

経験の総量 = 数 × 質 × 幅
たくさん経験していても、同じことの繰り返しだけでは「幅」が広がりません。
難しい仕事を経験していても、打席に立った「数」が極端に少なければ、経験として十分に蓄積されません。
また、さまざまな仕事を経験していても、一つひとつへの関わりが浅ければ「質」が高まりません。
だからこそ、どれか一つだけではなく、「数」「質」「幅」の3つをどう高めていくかが重要になります。
人材育成を考える際にも、「何年働いたか」だけを見るのではなく、その人に、どんな打席を、どれくらいの数、どれくらいの幅で経験させているか。
そんな視点を持つことが、AI時代の人材育成には必要になってくるのではないでしょうか。
次回は、この「数」「質」「幅」の3つについて、さらに具体的に掘り下げてみたいと思います。
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<この記事を書いた人>
株式会社AMBソリューションズ
藤野 匡生(ふじの まさお)
企業経営者、大企業の経営企画、シンクタンクでの経営・人事コンサルタントなどの豊富なビジネス経験を重ねて、人事の実務ノウハウやベストプラクティスの可視化、ナレッジマネジメントの重要性を確信。
これまで、100 社を超える企業に人事課題のアドバイスを提供。
