これまでのコラムでは、1on1を社内に浸透させるために、
・目的を明確にすること
・やり方を我流にせず、基本を学ぶこと
の重要性についてお伝えしてきました。
今回は、「社員の定着」をゴールにした時に、1on1でまず何を把握すべきかについて考えてみたいと思います。
■ 社員は大きく2つのタイプに分かれる
社員を大きく分けると、次の2タイプがあります。
① キャリア自律型の社員
自分のキャリアや仕事観、やりたいことに一定のこだわりを持ち、前向きに仕事へ取り組むタイプです。
・成長したい
・新しい挑戦をしたい
・自分なりのキャリアを築きたい
という意識を持っています。
② 淡々型の社員
一方で、
・会社に過度な期待はしない
・仲間と比較的穏やかに働ければよい
・安定して収入を得られればよい
というスタンスの社員もいます。
もちろん、どちらも会社にとって大切な存在です。
そして、どちらにも長く働いてもらいたいと考えるはずです。
ただし、この2タイプでは、1on1でのコミュニケーションの取り方が変わります。
■ キャリア自律型の社員には「対話」そのものが意味を持つ
キャリア自律型の社員にとって、1on1は非常に有効です。
本人の希望や挑戦したいことを丁寧に聞き、
・今の仕事の意味づけを行う
・適切な権限移譲を行う
・新しい経験を積ませる
こうした工夫を積み重ねることで、離職を大きく減らせる可能性があります。
以前のコラムでも触れましたが、私はこれを「適材適経験」と呼んでいます。
本人の可能性を踏まえながら、社内外で成長できる経験を設計していくこと。
ここに上司がしっかり向き合えるかが重要です。
■ 本当に危険なのは「淡々型が辞める会社」
一方で、私がより深刻だと感じるのは、
「淡々型の社員が定着しない会社」です。
なぜなら、淡々型の社員は、もともと会社に過度な期待をしていないケースが多いからです。
その社員ですら辞めていく場合、
・組織風土
・労働条件
・人間関係
・マネジメント
・労務実態
など、会社側に根本的な課題が存在している可能性があります。
この場合、1on1だけで解決できる問題ではありません。
むしろ1on1は、
「会社側の課題を把握する場」
として機能させる必要があります。
現場管理者だけでなく、経営者も含めて向き合わなければ、採用しても離職が止まらない状態になってしまいます。
■ “淡々化”してしまっている社員もいる
ただ実際には、
「キャリア自律型」
「淡々型」
と、明確に分けられない社員も非常に多いです。
むしろ、その中間が一番多いかもしれません。
本来は成長意欲が高かったにも関わらず、
・今の職場環境
・評価制度
・人間関係
・業務内容
などによって、諦めて“淡々化”してしまっているケースもあります。
だからこそ1on1では、単純に社員を分類することが目的ではありません。
重要なのは、
「その人の本質的な状態を理解すること」です。
■ 表面的な言葉ではなく、普段の行動を見る
1on1では、どうしても「話した内容」に意識が向きます。
しかし実際には、
・日頃どんな仕事への向き合い方をしているか
・どんな場面でモチベーションが上がるのか
・どこで諦めているのか
こうした“普段の行動”の方が、本質を表していることも多くあります。
表面的な言葉だけで判断せず、日常の行動も含めて現状を理解する。
これが、定着につながる1on1の第一歩だと思います。
■ 今日の結論
1on1でまず把握したほうが良いのは、
「その社員が、本質的にどのようなスタンスで働いているのか」
という点です。
キャリア自律型なのか。
淡々型なのか。
あるいは、本来は前向きだったのに、何かをきっかけに諦めてしまっているのか。
表面的な言葉だけではなく、普段の具体的な行動も含めて、まずは“現状を知ること”から始めていきましょう。
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<この記事を書いた人>
株式会社AMBソリューションズ
藤野 匡生(ふじの まさお)
大学卒業後、メガバンクへ入社。産業アナリストとして小売・サービス・不動産業の分析や国際金融担当のチーフマーケットエコノミスト、経営企画部にて新会社設立準備及び経営企画に携わる。その後、不動産ベンチャー企業に入社。経営企画責任者として、2005年に東証第一部に上場を果たす。
その後、ベンチャー企業へのハンズオン投資を行う企業に入社。副社長として、 投資案件の選定・事業育成・売却に至るプロセス全般を統括。投資先であるジュエリー・ブランドのリユース・リフォーム事業を行う企業の代表取締役に就任。日本初ジュエリー・貴金属のアセットマネジメントを行う企業にリモデル。主要百貨店やSCに22店舗を構え、10万人の会員規模に成長させた。ジュエリー資産の活用の啓蒙活動にも尽力。主要経済誌等に発表した論文・講演等多数。
現在も、リユース・ジュエリー業界での企業経営経験、人材採用・育成経験を活かし、複数企業のアドバイザーとして活躍するとともに、当社の取締役として採用支援に従事している。
