「会社から1on1をやるよう言われているけれど、正直、何を話せばいいのか分からない。」
現場のマネジメントの方から、こうした声をよく聞きます。
人事からは
「これからは1on1が組織内コミュニケーションの鍵になる」
「定期的に部下と30分~1時間話してください」
「仕事の話ばかりではなく、相手の話をよく聞くように」
といった説明があるものの、現場では「結局、何を話すのか」が分からないまま始まっているケースも少なくありません。
実際、私自身も様々な企業の現場マネージャーの方から、
「1on1をやれと言われているが、正直何を話せばよいのか分からない」
「雑談で終わってしまう」
といった悩みをよく耳にします。
現場で定着しなかった1on1
先日、日本を代表する金属メーカーの人材育成責任者の方と話す機会がありました。
その会社でも1on1を導入していたものの、なかなか定着しなかったそうです。
特に難しかったのは、製造や物流などの現場部門でした。
現場では日々の業務が忙しく、1on1を「追加の業務」として捉えられてしまうことも多かったそうです。
そこでその会社が行ったのは、1on1の目的を明確にすることでした。
それまでは、期初に目標を設定し、期末に評価するという目標管理は行われていました。しかし、その間に上司と部下が個別にコミュニケーションを取る機会はあまり多くありませんでした。
言葉は少し強いですが、目標を作りっぱなしの状態だったのです。
1on1の目的は「フィードバック文化を作ること」
そこでその会社では、1on1を
「上司から部下へのフィードバックを継続的に行う場」
として位置付けました。
モチベーションの低下や離職の兆しなどを、その都度人事が対処する“対症療法”ではなく、組織全体として「個人に向き合う文化」を作ることを目的にしたのです。
つまり、
- 上司が部下の目標に関心を持つ
- 進捗や課題を継続的に共有する
- 良い点も改善点もフィードバックする
こうしたコミュニケーションを積み重ねることで、社員一人ひとりが「自分はきちんと見てもらえている」と感じられる組織を作る。
その文化を作るための核が、上司と部下の1on1だという考え方です。

目的が明確になると1on1は変わる
1on1の目的が共有されると、上司も部下も「何を話すか」で迷わなくなります。
目標に対する進捗や課題、取り組みのプロセスについて話し合い、必要に応じてフィードバックを行う。
これを継続することで、上司と部下の信頼関係も自然と深まっていきます。
また、こうしたコミュニケーションを続ける中で、仕事上の課題だけでなく、キャリアや働き方に関する悩みなども把握できるようになります。
結果として、社員の納得感やモチベーションの維持にもつながっていきます。
1on1は「手段」であって「目的」ではない
1on1は、実施すること自体が目的になりがちです。
しかし本来は、組織のコミュニケーション文化を作るための手段です。
だからこそ重要なのは、
「なぜ1on1を行うのか」
という目的を、上司・部下・会社全体で共有することです。
1on1を導入している企業ほど、改めてこの目的を整理してみると、運用の質が大きく変わるかもしれません。
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<この記事を書いた人>
株式会社AMBソリューションズ
藤野 匡生(ふじの まさお)

大学卒業後、メガバンクへ入社。産業アナリストとして小売・サービス・不動産業の分析や国際金融担当のチーフマーケットエコノミスト、経営企画部にて新会社設立準備及び経営企画に携わる。その後、不動産ベンチャー企業に入社。経営企画責任者として、2005年に東証第一部に上場を果たす。
その後、ベンチャー企業へのハンズオン投資を行う企業に入社。副社長として、 投資案件の選定・事業育成・売却に至るプロセス全般を統括。投資先であるジュエリー・ブランドのリユース・リフォーム事業を行う企業の代表取締役に就任。日本初ジュエリー・貴金属のアセットマネジメントを行う企業にリモデル。主要百貨店やSCに22店舗を構え、10万人の会員規模に成長させた。ジュエリー資産の活用の啓蒙活動にも尽力。主要経済誌等に発表した論文・講演等多数。
現在も、リユース・ジュエリー業界での企業経営経験、人材採用・育成経験を活かし、複数企業のアドバイザーとして活躍するとともに、当社の取締役として採用支援に従事している。
