キャリア形成の重要性
近年、企業の人事部門では、従業員の「キャリア形成」が大きなテーマとなっています。
「キャリア」というのは経歴・経験・関連した職務の連鎖のことで、「キャリア形成」はキャリアを通じて職業能力を形成していくことと捉えられています。
企業のキャリア形成に関する取り組みの一環として例えば、
・タレントマネージメント
・one on one
・副業・兼業
・ジョブ型雇用
・エンゲージメント向上
などが挙げられます。
大手企業を中心に、従業員のキャリア形成に会社が積極的に関わり、従業員に職務経験などを積ませることで職業能力の形成を支援する取り組みが広がっています。
労働力人口の減少とキャリア形成の関係
では、なぜ「キャリア形成」という言葉が注目されるようになったのでしょうか?その理由は、日本の労働力人口の減少と高齢化により、従業員の生産性向上が喫緊の課題となっているためです。
日本における労働力人口の減少は深刻で、2030年には15歳以上65歳未満の生産年齢人口比率が6割以下となり、労働需要に対する人手不足は644万人とも予測されています。
このような状況下で、人口減少に対抗し、労働力不足を補う手段として、従業員の生産性向上が求められており、会社が積極的にキャリア形成に関わるようになってきているのです。
会社が従業員のキャリア形成に積極的に関わることで、従業員が将来目指したい姿を具体的にイメージできるようになり、目の前の業務に取り組む理由が明確になります。
企業が求めていることや自分のことを知ろうとする機会が増え、ビジネスシーンにおいても、自然に自分がとるべき行動やスキルの高め方を見つけることができるようになっていくのです。
こうした取り組みを行った結果として、組織全体が活性化され、労働生産性の高い従業員が増え、結果として企業業績が向上することに繋がります。個人においては、やりがいや自己実現という目的に大きな影響を及ぼすだけでなく、収入増にも繋がっていきます。
こうした一人一人の社員への「キャリア形成」を企業が支援することを通じて、従業員の満足度が高まり、自律的に自身の目標に向けて前向きに働く従業員が増えることで、一人当たりの労働生産性が向上するという好循環が生まれていきます。
採用力とキャリア形成の関係
人材不足により、これまで以上に人的資源の獲得競争が激化することは目に見えており、キャリア形成に積極的に取り組む姿勢が採用力に大きく影響するといっても過言ではありません。
キャリア形成に積極的に取り組む姿勢は、企業の評価を高め、新卒、中途を問わず、優秀な人材の採用につながります。キャリアを企業任せにせず、自ら成長する意欲のある人を集めることができるでしょう。
特に、これから新しいキャリアを築きたいと考えている転職希望者には、キャリア開発の支援は魅力的に映るはずです。
実際に、求職者は企業選定にあたり、面接の際に
「具体的に(実務場面では)、どのようなキャリア支援をしてるのか?」
「(他社と比べて)どのような制度があるのか?」
「キャリアステップやそれを実現している人はいるのか」など、
具体的なキャリア形成の取り組みを質問したりするケースもあるようです。
このような背景もあり、企業はホームページやIR資料等で人材育成やエンゲージメントに焦点を当て、どのような人的資本経営をしているのか?という点を具体的にアピールすることが求められています。
こういったキャリア形成に関する会社の価値観や具体策を打ち出していくことが、採用だけでなく、社員のモチベーションないしは、将来的には会社の業績に大きく影響してくるということを経営者の方がしっかり理解していかなければなりません。
リユース企業の人材課題とキャリア形成の実態
SDGs、ESGの浸透や、フリマアプリの台頭などから需要が大幅に拡大し、リユース市場は14年連続で拡大し、2025年には市場規模が3兆円を超えてくるともいわれています。
これらに連動して、急成長するリユース企業が多い一方で、こちらも慢性的な人手不足の問題を抱えています。
この人材不足の解消にも、会社が積極的にキャリア形成に関与し、制度を導入して運用するという方法があげられます。
急成長を遂げた企業の特徴として、どうしても事業を始めたばかりの頃は、自社の業績、経営者のやりたいことの実現にフォーカスしてしまうという現象が起こりがちです。企業業績が優先され、「まずは出店しなきゃ」とか「人がいないから人事異動でなんとかしよう」など、目の前の事象に対して、対処をし続けている状態となります。
常態的な長時間労働が発生し、不透明な人事評価、処遇に対する不満等の解消は後回しにされていく。従業員の頑張りに甘えるかたちで、目の前の事象に対して対処し続けて、1年〜2年も経った頃。気づくと、社員はかなり疲弊していたということになってしまいます。
その結果、優秀な人材が離脱していくということに繋がり、こうした環境が改善されない限りは、採用しても人が辞めてしまい、結局、採用コストの方がよっぽどお金がかかってしまっている、ということになりかねません。
こうした場合、人的資本経営をしている同業他社と比べて、労働生産力の面で格差が生じているということにもなってきて、会社の業績にも大きな影響を及ぼしていくことは容易に想像できます。
まとめ
リユース業界のビジネスモデルは、古いものを買い取ってそれを売却するというビジネスモデルで、企業ごとに取り扱いアイテムや展開領域は違っても、そのビジネスモデルの差自体が企業を選ぶ際の基準にはなりにくい業種といえます。
こうしたことを考えると、リユース業界の一企業が、「選ばれる企業」になるためには、今働いている社員に魅力的な成長機会やキャリア形成をするということを実現すること。そして、働きやすさや、待遇、成長機会があるということを企業のアピールポイントにしていき、新規の人材獲得に活かしていくということが非常に大切だと思います。自社の社員のキャリア形成をよりよく支援できるよう、本記事での情報をぜひお役立てください。
株式会社AMBソリューションズでは、20代からシニアまでの各世代や、女性活躍推進、管理職向けなど、課題に合わせたキャリア形成のノウハウを保有しています。キャリア形成をこれから積極化したいとお考えの方、キャリア形成を進めるに当たってどう進めるとよいのかお困りの方がいらっしゃいましたら、ぜひ弊社までお問い合わせください。
次回はキャリア形成を促進する3ステップについてお伝えしていきます。
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<この記事を書いた人>
株式会社AMBソリューションズ
藤野 匡生(ふじの まさお)
大学卒業後、メガバンクへ入社。産業アナリストとして小売・サービス・不動産業の分析や国際金融担当のチーフマーケットエコノミスト、経営企画部にて新会社設立準備及び経営企画に携わる。
その後、不動産ベンチャー企業に入社。経営企画責任者として、2005年に東証第一部に上場を果たす。
その後、ベンチャー企業へのハンズオン投資を行う企業に入社。副社長として、 投資案件の選定・事業育成・売却に至るプロセス全般を統括。投資先であるジュエリー・ブランドのリユース・リフォーム事業を行う企業の代表取締役に就任。日本初ジュエリー・貴金属のアセットマネジメントを行う企業にリモデル。主要百貨店やSCに22店舗を構え、10万人の会員規模に成長させた。ジュエリー資産の活用の啓蒙活動にも尽力。主要経済誌等に発表した論文・講演等多数。
現在も、リユース・ジュエリー業界での企業経営経験、人材採用・育成経験を活かし、複数企業のアドバイザーとして活躍するとともに、当社の取締役として採用支援に従事している。